詩人の部屋 響月光

響月光の詩と小説を紹介します。

2021-06-01から1ヶ月間の記事一覧

小説「恐るべき詐欺師たち」(全文)& 詩

詩神の道化師 疫病が猛威を振るって人々は職を失い路頭に迷っている資本主義なんてシステムじゃ金欠症は菌血症とは反対に血中に黴菌も栄養も流れず死に至る病になっちまう嫌だね山口判事じゃあるまいし、…けれどいったい一文無しになることは絶望か?そいつ…

小説「恐るべき詐欺師たち」(最終)& 詩

詩 宇宙人待望論 (戦争レクイエムより) 昔、神が存在しなかったとき 男たちは力任せに人を殺し、強姦し、略奪を繰り返した 僭主たちは強引に他国へ侵攻し、町々を破壊し尽くした 悲嘆に暮れた多くの人々は平和を願い、幸福を望んだ そのとき、一人の男が、…

小説「恐るべき詐欺師たち」九 & 詩

詩 楽園 昔、氷に閉ざされた極北に 所有という概念のない人々がいた 男たちが凍った獲物を凍った広場に積み上げ 女たちが好きなだけ持って帰り 子供たちはナイフで肉片を削りながら腹を満たした 食い物といえば魚や海獣や鳥ぐらいだが、豊富で 生肉はビタミ…

小説「恐るべき詐欺師たち」一 & エッセー

エッセー 未来の裁判官 スポーツの世界では誤審の多さがいつも問題となり、スポーツ観戦の楽しみに水をかけてファンを消化不良にさせている。野球でも、主審の癖を知らないでピッチングしたら、四球の連続になりかねない。どう見てもストライクなのにボール…

小説「恐るべき詐欺師たち」二 & 詩

詩 アルカディア 人間が嫌いだといいながら 人間の中でしか生きていけない男が ある日発心して砂漠へ旅立った 何日も何日もラクダの背に乗って 茫漠とした砂の海をさまよいながら 人のいないアルカディアを探し続けた 一週間も旅をすると水筒の水も無くなり …

小説「恐るべき詐欺師たち」八 & 詩

詩 万引家族 ある日孤高の父が生活費に困り そうかといって借りる友もおらず 原始時代に戻ることを決心した 原始時代には 人々は狩猟生活を営み 命を繋いできた、と父は言う それは動物という獲物の生活を壊し 彼らの幸せを奪うことである しかし都会という…