詩人の部屋 響月光

響月光の詩と小説を紹介します。

2020-05-01から1ヶ月間の記事一覧

ホラー「線虫」十 & 詩

詩 不揃いの果実に捧げる挽歌 お前ら生まれたばかりの醜い果実は 長い長いベルトコンベアの上に乗せられて 行き着く先まで運ばれていくのだ 途中で転がり落ちないように 狭い狭い箱の中にぎっしり無理やり押し込まれ 無鉄砲な体は押しつぶされ曲げられ 型に…

ホラー「線虫」八・九 & 詩

詩 人生は戦いである この世に飛び出たとき 同類の泣き声が耳に障り 敵も同時に生まれたことを知った 母親の愛情を独占するため 兄弟姉妹との戦いが始まった 学校に入ると受験競争が始まり 友達は敵ともなった 会社に入れば出世のために 多くの同僚を蹴落と…

ホラー「線虫」七 & エッセー

ホラー「線虫」七 七 病院から戻ったときは、すでに夕方の六時を過ぎていた。武藤は近所の店で買った弁当をちゃぶ台の上に置き、お茶を飲もうとやかんの水を沸かした。沸騰したところで火を止めると、チャイムが鳴った。 「どなたですか?」 「舞です」 顔か…

ホラー「線虫」六 & 詩

詩 新興住宅街 だだっ広い農地の主が死に 住宅街ができた どれも安普請だが外壁は綺麗だった 道も植え込みもそれなりに美しかった 駅から遠いのにけっこうの値段で売り出した 小金持ちたちが長期ローンを組んで住み着いた 一年後に悪疫が流行って不景気がや…

ホラー「線虫」五 & 詩

詩 正義のために 神のために 世界のために 民族のために 国家のために 悪を殺そう 部族のために 一族のために 家族のために 私のために 悪を追い出そう みんなのために 正義をつくり 悪を滅ぼそう 正義ができたら 悪をつくり 悪を滅ぼそう みんなで正義をか…