詩人の部屋 響月光

響月光の詩と小説を紹介します。

2020-06-01から1ヶ月間の記事一覧

ホラー「線虫」(全文) & 詩

詩 あちらの感性たちへ 僕は一割にも満たないこちらの感性で君たちを見ている 遠足の手引きの簡単な漢字が読めなかった無教養な先生を 大笑いで辱めた九割方のあっちの感性たちよ 君らにとって人生の辛さを忘れる手段は 馬鹿笑いだけなのがさびしい限りだ 怒…

ホラー「線虫」十四・十五 & エッセー

ホラー「線虫」十四・十五 十四 武藤と音羽は、町の事態を早急に伝えようと、放置されていた車を使ってゴーストタウンと化した琴名町から逃れ、隣町の警察に駆け込むことにした。日暮れまでは二時間しかない。日が暮れたら原始時代の哺乳類よろしく、線虫人…

ホラー「線虫」十三 & 詩

詩 形状記憶遺伝子 俺が発見したのは 形状記憶遺伝子という頑固者 生まれたときは真っ直ぐだった いろんな奴らがからかい半分に指先でこねくり回し グニャグニャに捩じられちまった ところが何を勘違いしたものか 心も体もそいつが基本と思い込んじまって 若…

ホラー「線虫」十一・十二 & 詩

詩 宇宙の切れ端 (ある宗教団体へのプロテスト) ある日 宇宙の果てから 不可解な精神の断片が臓腑に飛び込んできた そいつは大きな球体の一パーセントにも満たない欠片で どうやら欠伸をしたときに飲み込んでしまった それでもそいつは私を憂鬱にさせるに…