詩人の部屋 響月光

響月光の詩と小説を紹介します。

2019-08-01から1ヶ月間の記事一覧

おかしな一家Ⅰ & 詩ほか

おかしな一家Ⅰ リニア新幹線を使えば、東京から福岡まで二時間ちょっとで着いてしまう。それなのに、地下ばかり走るから退屈だという声が聞かれるのは、あらゆるものが加速度的にスピード化していく中で、移動時間の短縮化にはまだまだ不満を持つ人間が多い…

火星移住(全文)& 詩

火星移住(全文) 国際連携主催のスパコン・コンクールで勝利したのが、量子コンピュータ「ピッコ」だ。地球温暖化は当然制御不能、気候変動による食糧難が世界を苦しめている。アメリカをはじめ主要各国が自国優先主義を標榜する中、世界同時核戦争の危機が…

火星移住(最終)& 詩

火星移住(最終) 克夫の職場は海抜マイナス二千メートルの最深部に設置された小規模マグマ発電所である。施設が必要とする電力のすべてを賄っているが、働いている人間は克夫と同僚の二人だけで、ほかはすべてロボットだった。二人の任務は極秘扱いで、それ…

火星移住Ⅴ & 詩

火星移住Ⅴ 食事付きの説明会のあとは、やはりピンキー加工現場と広大なストックヤードを見学し、それから屋上に移動して、午後のやや傾きかけた太陽の下で、感動的な新旧交代劇を見物した。硬直したピンク色の人体が、太陽の光を受けてみるみる軟化していっ…

火星移住Ⅳ & 詩

火星移住Ⅳ 学は落ち着いた口調で「あなた、ご亭主?」といって薄わらいを漏らした。勉は状況が分からずに「どういうことですか?」と学に聞き返した。 「彼女はあなたの妻かも知れませんが、僕の愛人です」 どっとわらいが沸き上がった。その中で、勉と小林…