詩人の部屋 響月光

響月光の詩と小説を紹介します。

2019-06-01から1ヶ月間の記事一覧

恐るべきリケジョたちⅣ & ネクロポリスⅫ

世にも不愉快な物語 恐るべきリケジョたちⅣ しかし本当の地獄は、まだ始まっていない。地獄は、緑のお肌がいやだなんだといったムーディーな話じゃないのだ。そのまま一カ月ほどは煉獄的な中途半端な状態だが、これは天国といっても間違いはなかった。目立っ…

ネクロポリスⅩⅠ & 恐るべきリケジョたちⅢ

ネクロポリスⅩⅠ あてどもない放浪は、広大な塩湖に阻まれた 死の海の畔の岩に、ギリシア風の戦士が腰を掛け 浮き沈みする無数の塩玉を眺めていた それは赤子の魂のようにまん丸だった 俺は金平糖のように尖っていたのさ…… アテネに滅ぼされた小さな島の大将…

ネクロポリスⅩ & 恐るべきリケジョたちⅡ

ネクロポリスⅩ 老人は天まで届くような巨木の下に佇む 首なし兵隊に誰何された 「昔、貴方の敵兵でした」 「ここはキリングフィールドさ。君たちが射止めた連中は 大地に帰って木々の栄養になったんだ」 兵隊のされこうべは、ヤゴの指輪になっていた 破壊さ…

ネクロポリスⅨ & 世にも不愉快な物語Ⅰ

ネクロポリスⅨ 老人は太った老人の手招きでたらいの側にやってきた たらいの側面に耳を当てて、妻の歌を聞いてください 昔はやった「マクベス夫人」の歌です まるで天使の歌声ですよ 老人が耳を当てると、コケットな歌声が聞こえてきた 信じなさい 手に入る…

ネクロポリスⅧ

丘の下に大きなたらいがあった。 恰幅のいい老人が空しい眼差しで たらいの中を眺めていた 一匹の太ったマグロが 大きな円を描いて泳いでいる これはかつて私の妻でした 老人はため息を吐きながらつぶやいた 妻はジッとしていられない女でした 動いていない…