詩人の部屋 響月光

響月光の詩と小説を紹介します。

2019-09-01から1ヶ月間の記事一覧

おかしな一家(最終)& 詩他

おかしな一家(全文) リニア新幹線を使えば、東京から福岡まで二時間ちょっとで着いてしまう。それなのに、地下ばかり走るから退屈だという声が聞かれるのは、あらゆるものが加速度的にスピード化していく中で、移動時間の短縮化にはまだまだ不満を持つ人間…

おかしな一家(最終)& 詩

おかしな一家(最終) 「仁ちゃん。あなたは二〇歳で結婚しないで、三〇歳で結婚するの。そのお相手はここにいる早苗さんだけれど、彼女はすでに人妻だわ。なら、どうしましょう。簡単よ。今日、早苗さんから皮膚の細胞を少しだけいただいて、伯父さんにクロ…

おかしな一家Ⅲ & 詩

おかしな一家Ⅲ 車はスクリーン壁の狭間を通過してしばらく畑の道を走り、それから鬱蒼とした森に入った。林道を五分ばかり走ると開けたところに出て、田んぼには稲が青々と育っている。今度こそは本物であろう門の前で停止し、鉄扉は音もなく開く。そこから…

おかしな一家 & 詩

おかしな一家Ⅱ 仁は背の高い草を掻き分けながら草原を歩き始めた。草に触れると指が切れそうな痛さを感じるが、すべては仮想現実で、本物の草が生えているわけではない。仁の姿は時たま草に隠れて見えなくなるものの、ゾウが付いていたので見失うことはなか…