詩人の部屋 響月光

響月光の詩と小説を紹介します。

2020-10-01から1ヶ月間の記事一覧

アバター殺人事件(六)& エッセー

アバター殺人事件(六) 六 ドッペル夫婦というと、ガラスケースの中でうろうろしていると思いきや、パチンと消えてしまい、奥の秘密部屋から二人の若い男女が出てきた。ドッペル夫婦の声を担当していた物まね上手な連中だ。宇宙からやってきた異星人という…

アバター殺人事件(五)& 詩

詩 美しい五月に 難病で死んでいく彼は、いつも若い奥さんに話していた 僕は千人のアバターでできていて その一人として地球に生まれたんだ ほかの九百九十九人は宇宙のあちこちに散らばっていて そのうち九人は僕と同じ病気に罹っている けれど残りの九百九…

アバター殺人事件(四)& エッセー

アバター殺人事件(四) 四 三人が通された部屋は迷路のようなトンネルの奥深くにあった。部屋の中には、あの下町のオフィスビルにあったような治療用の寝椅子が三台置かれていて、あのときのように三人は仰向けに寝て、頭部を筒の中に入れた。筒に埋め込ま…

アバター殺人事件(三)& 詩

詩 異質の感性 こちら側の感性は あちら側の感性の吐き出す汚水に流され 丸い油球となって漣に揉まれ漂うのだ 嗚呼、永遠に溶け入ることはできない芳香油よ お前は泥水に転がされながら身を丸くして クルクルと目を回しながらも必死に我慢し どこに漂うか分…